年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
そして、いつまでも.
「――王子様とお姫様は幸せに暮らしました。おしまい」

 そう言って俺は絵本をパタンと閉じる。

「もういっかい!」
「え? もう3回読んだんだけど?」
「いいの! お姫様、好きなの!」

 俺の膝の上に座って、振り返るように見上げた3歳の愛娘は頬を膨らませている。さっちゃんによく似た大きな瞳に、柔らかなほっぺ。本当に可愛いなぁと今日もやっぱり思ってしまう。

「わかりましたよ。お姫様」

 つい絆され、本日4回目の読み聞かせに突入しようとしたところで後ろから声がした。

「もう寝る時間よ?」

 リビングの入り口には、1才半の愛息を抱っこして立っているさっちゃんの姿があった。

「もうおやすみしようね?」

 絵本を閉じ、頭を撫でそう言うと、渋々「はぁい……」と返事をしている。そして先に立ち上がると、いつものようにリビングの片隅に走っていく。

「かんちゃん。おやすみなさい」

 もうとっくに寝ていたかんちゃんは、片目を開けて耳を動かしそれに答えた。それに満足したのか、また俺の元に駆けてくる。

「パパ! 抱っこ!」

 天を仰ぐように大きく両手を広げ、満面の笑みを浮かべてそう言う。そんなことを言われて、俺が抗えるわけなかった。
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