年上カメラマンと訳あり彼女の蜜月まで
5.
「楽しかったね!」

 アトラクションを降りた後、出口に向かいながら睦月さんは屈託のない笑顔を見せた。
 きっとその笑顔に裏はない。子供の様に笑うその顔のままに、本当に楽しんでくれているのだと思う。

「そう言って貰えると乗った甲斐ありました」

 そんな睦月さんの姿に、私も釣られて笑顔になる。

 2人で乗ったアトラクションは、人気があって長蛇の列、なんてことにはならないもの。でも私は大好きで、来ると必ず寄ってしまう。

 シンドバッドの冒険を歌と共に巡るそれは、乗るといつも前向きな気分にさせてくれる。
 宝物を探しに行って、見つけたものは友達だった、と言う内容。
 私はいつもこれを聞くと思う。人の出会いって、本当に宝物だ。
 きっと香緒ちゃんや、希海さんに出会わなければ、憧れだったこの場所に、散歩しに来るなんて贅沢は出来なかっただろう。

 そして、私の大事な宝物は、また新しい出会いを運んで来てくれた。

 何も話していない時でも、いつも口角を上げて笑っているような表情を見せてくれる人。
 そしてそれは上っ面だけじゃないのが、こうやって一緒に過ごしていると分かる。

 本当に……睦月さんって、いい人だな……

 なんだか凄く安心する。そんなことを男の人に思ったことはない気がした。
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