「メリッサ、婚約を解消しよう」


親に決められた婚約者に別れを切り出したのは、
致し方ないことだった。
幼い頃から一緒で、大切に想っていたけど、
だけど、だからこそ、許してはいけないのだと思った。

今にも泣き出しそうな顔に、胸が痛んだ。
それでもこれは彼女のためでもあるのだと、
罪のない令嬢を虐げ、信頼を裏切った彼女を
改心させるためなのだと、思っていた。

あの泣きそうな顔が、浮かんでは僕を責める。
信じきれなかった。繋いでいた手を離してしまった。

僕はきみを、愛していたはずなのに――。

あらすじ

侯爵家の嫡男であるオスカーは、親の決めた婚約者に婚約解消を告げた。
幼い頃からの関係だった。大切な存在であることに間違いはなかった。それでも、別れを告げることがお互いのためなのだと信じていた。

彼女は年下の令嬢を虐げ、ことごとく彼を裏切ったのだから――。

そう思っていた。彼女の訃報を聞き、遺された手記を手に取るまでは。

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