君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
運命の人
朝、離婚届を真紘さんに預け、身の回り品だけを詰めたボストンバッグを持って桐嶋家を出た。

ほかの荷物は私の引っ越し先が決まり次第、真紘さんが配送の手配をしてくれることになっている。

繁華街に出て、仕事と住むところを探していたら、あっという間に午後三時を過ぎていて、お昼ごはんを食べ損ねてしまった。

すぐそばにあったファストフード店に入り、ドーナツ一個だけ注文する。

結局今日はなにも決まらず、先行きが不安でおなかが空かなかった。

早速弱気になっている場合じゃないのに、いつものプラス思考がうまく働かない。

……こんなときは母に会いに行こう。

思い立ってすぐ花屋で小さな花を買い、バスに乗って母が眠る寺院墓地に向かった。

歴史ある寺院は、訪れた人を優しく包み込んでくれるような雰囲気がある。

母のお墓と桐嶋家のお墓には、同じ花が溢れるくらい供えられていて、目をぱちくりさせた。

お義父さまがお参りしたのだろうか。

線香の残り香があったから、それほど時間は経っていなさそうだ。

まずは桐嶋家のお墓に、次いで母のお墓の前で手を合わせる。

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