君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
巡り合わせの再会
「うわぁ、ものすごいお屋敷だぁ……」

一週間後、桐嶋のおじさまに教えられた住所に向かうと、そこには数千坪の広大な敷地に、瀟洒な佇まいの洋館がドドンと建っていた。

高級住宅地の中でも一線を画す大豪邸だ。

まだ一、二歳の頃、母に連れられて、何度かここに遊びに来たらしいけれど、当然ながら覚えていない。

絢子さんは私と母が住んでいるアパートのほうが落ち着くと言い、我が家によく来ていたのもあって、私がここを訪れるのはそれ以来だ。

すでにアパートは引き払い、大きな荷物は昨日のうちにこちらに送ってある。今、手に持っているボストンバッグには、身の回り品だけが入っていた。

家族全員が揃っているときのほうが紹介しやすいからと、桐嶋のおじさまに休日を指定されたため、今日はふたりの息子さんたちとも顔を合わせる予定だ。

長男は郁人さん、三十歳。次男は真紘(まひろ)さん、二十一歳で、私と同い年だ。ふたりに会うのも二十年ぶりくらいだった。

実は長男の郁人さんとは、微笑ましいエピソードがある。

私が一歳のとき、このお屋敷の廊下を四つん這いでハイハイしていたら、なんと初めて立ったそうだ。

そして一歩踏み出したとき、転んで柱の角で頭をぶつけそうになった。

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