君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む

郁人Side

午後二時過ぎ。

二泊三日の出張を終え、東京に戻ってきた。

「郁人さま、お疲れさまです。ご自宅に直帰なさいますか?」

空港から秘書の牧野が運転する車に乗り込むと尋ねられた。

「いや、その前に少し寄りたいところがある。まずは花屋に向かってくれ」

「花屋ですか? 承知いたしました」

車は近くの生花店に向かって走り始めた。

三日前、みちるに『帰ってきたら話があるんだ』と言ったがその前に、許しをもらっておかないといけない人がいる。

「そういえば、会社のほうに藤間史乃さんから何度かお電話があったようです」

牧野に告げられ、眉をひそめる。

「史乃さん?」

「はい。用件をお尋ねしても郁人さまに直接お話したいとのことでしたので、受付係が帰社後折り返しますとお返事したようです。お急ぎでお伝えしたほうがよろしかったでしょうか?」

「いや、問題ない」

今それを聞いても電話をかける気にもならなかった。

彼女と私用の連絡先は交換しておらず、あのカクテルパーティーの日以来音信不通だ。会社や親同士のつながりがなければ、二度と関わりたくなかった。

みちるに対して吐いた暴言を許しはしない。

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