まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
エピローグ
「いってきます」

 実家に戻ってから三週間の時が経ち、最近の日課はパグのシボリとお散歩をすることだ。

 両親は帰ってきた私に何も聞かなかった。

 父は会社を救うきっかけとなった私の結婚に少なからず負い目を感じているのか、妊娠した事実を伝えたら『それはめでたい』と喜ぶだけで深い事情は聞いてこなかった。

 母もまた『初孫ね』なんて言って相変わらず能天気にベビー用品を買い込んでいた。


「シボリ、今日はちょっと歩いてみようか」

 なんとなく外へ出たら今日は少し歩きたくなった。引き寄せられるように向かった先は家から二十分ほど歩いたら見えてくる月島園。

 ここへ来たのは久しぶりで無性に懐かしさを覚える。最初に来たのは巧さんとの結婚式の下見で、それから一哉さんと会って着付けの手伝いをする羽目になった。

「懐かしいな」

 一年しか経っていないなんて信じられないほど色々なことがありすぎて随分昔のことのように思えてくる。

 ちょうど讃美歌が風に乗って聞こえてきて今まさに愛を誓いあっているカップルがいるのかと思ったら、一哉さんの顔が浮かんだ。

「行こうか」

 シボリを連れて歩き出そうと一歩を踏み出した時、傍に停まった車の運転席から出てきた人物に言葉を失った。

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