色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ

「お礼はいつしましょう?」

 国家騎士団は王様の忠実なる(シモベ)だそうだけれど。
 地域密着型の騎士団は、私の国で言う、警察官や自衛隊の仕事も担っているらしい。

 どう考えても、太陽様は町をウロウロしているようにしか見えないのだが…
「あ、先生。こんにちはー」
 と、太陽様に挨拶されると。
 ああ、またかよっと手を拳にして「どうも」と言って頭を下げる。

 町を見回りしている太陽様。
 絶対に一日に一度は顔を見合わせるから気まずい。
 シナモンの話によると、
「太陽様は国家騎士団でも優秀な人らしいですよー。強くてあのイケメンですし。性格もご兄妹(きょうだい)の中ではダントツで良い人なので、町の皆に好かれているそうです」
 …ふうん。

 生徒の家へ行く途中や、帰り道。
 礼拝堂での演奏中や演奏後に絶対に顔を見合わせる。
「お礼はいつしましょう?」
 と言われるたびに、「忙しいので」とかわしてきたけど。
 だんだん、苦しくなってくる。
 こんなに毎日、顔を見合わせるとは思ってもいなかったからだ。

 その日は、珍しく。
 太陽様に会わなかったので「よっしゃあ」と思いながら帰っていたのだが。
 家の前で、太陽様とシナモンの2人が喋っているのが目に入ったので。
 絶望した。
「あら、エアー様。おかえりなさい」
 シナモンはすぐに私の気配に気づいたのか、こっちを向いた。
 続いて、太陽様も私を見る。
「じゃあ、自分はここで。荷物置いておきますね」
「あ、太陽様。是非、うちでお茶でも飲んで行ってくださいな」
「ゲエッ!」
 シナモンの言葉に下品な言葉が出てしまったが、
 シナモンも太陽様も聞こえていなかったのか、こっちを見ることはない。
「すんません。まだ仕事中なんで。では、先生。お時間あるときにでもお食事しましょう」
 爽やかな笑顔で走り去っていく太陽様を見て。
 私はシナモンを睨みつけた。
「どういうこと?」
「ああ。お買い物行って買いすぎじゃって。そうしたら太陽様に会って荷物運ぶのを手伝ってもらったんですよ。すぐにお茶にしますねー」
 悪気を感じさせることもなく、茶目っ気たっぷりにシナモンが言って部屋へと吸い込まれていく。
 太陽様は私の態度が冷たいから、シナモンに取り入る計画に変えたのだろうか?
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