色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ

シナモンの提案

 疲れ果てて、椅子にもたれていると。
 爽やかな匂いを感じる。
 ガラス製のティーポットを持ったシナモンがカップにミントティーを注いでいる。
「一度、太陽様とお食事されてはいかがですか? 一度お付き合いすれば済むことでしょう?」
「えー」
 まさか、シナモンにそんなことを言われるとは思ってもいなかったので、がっくしと落ち込む。
「何故、そんなに太陽様のことを嫌がるのです?」
「嫌ってわけじゃないよ。…なんかね」
 シナモンは前に座り込んだ。
 湯気のたつカップを眺める。
「太陽様は単純に、イチゴ様のことをエアー様からお聞きになりたいのではないのでしょうか」
「へ?」
「イチゴ様は思春期の真っ盛りなようですし。離れて暮らしていた太陽様にとってイチゴ様の様子をエアー様からお聴きしたいのだと思いますよ」
「…いやあ。でも、食事ってさあ」
 うんざりしながら、カップを持ってミントティーを一口飲む。
「エアー様。ピアノを教える立場としては、保護者に生徒の状況報告をすることも仕事の一つだと思いますよ」
「うっ」
 シナモンの一言があまりにも正論だったので。
 両手で、胸をおさえる。
 それでも、シナモンは曇りない真っ直ぐな目でじーとこっちを見てくる。
「…わかったよ。会ったときに伝えるよ」
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