色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ

私の侍女

「驚かせてごめんなさい。テイリー様の命を受けまして、本日よりアリア様の侍女として働くことになりました」
「テイリーの…?」
 女の子を凝視しながら私はテイリーとの会話を思い出していたが、
 侍女のことに関しては一切聞かされていなかった。

 怪しい…と思ったが、
 女の子はそんなことお構いなしに。
「立ち話はなんですから、どうぞ中へ」
 と言って、私のスーツケースを勝手に持って行ってしまう。

 女の子は右側の扉をガチャリと開けると、
「どうぞ、お座りになってください。お茶のご用意をしますから」
 と言った。
 日の当たるあたたかなダイニングルーム。
 真っ黒なテーブルがあり、その周りに椅子が4つ置いてある。
 ガランとした部屋には食器棚が置かれ、海が描かれた絵画が一枚飾られている。
 音のするほうを見ると、オープンキッチンになっていて。
 女の子がお茶の準備をしている。

 自分の家…とはいえ、緊張感漂う空間に「はあ」とため息をついていると。
「どうぞ」
 と言って、女の子がティーカップを目の前に置いた。
 花の模様が描かれたティーカップには茶色い液体が入っている。
 彼女のことを怪しいと思いながら、椅子に座り、ティーカップを持ち上げ液体を一口飲む。
 液体の正体は紅茶だった。

 女の子は目の前に座り込んで、同じようにティーカップを持ち上げて、紅茶を一口飲む。
 侍女の立場だという人間と、面と向かってお茶なんてしたことないから、緊張する。

 祖国で、家にいたころはいつだって。
 一人で食事をしなければならなかった。
 だから、目の前に誰かがいると変に緊張してしまう。
「私、貴女(あなた)のことテイリーから一切聞かされてなかったわ」
 緊張しているせいか、妙に声が震える。
 女の子はじっと、私を見てくる。
「ああ、そりゃそうです。私達、妖精族は公に人前に出ることを許されないので」
「ん?」
 さらりと言い放った言葉の一部分に。
 爆弾発言があることに気づいた。
「妖精族?」
 眉間に皺を寄せる。

「貴女、妖精・・・なの?」
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