【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

五十一

 夜は荷馬車の中で休み、王都までグルは荷馬車を走らせた。

 エルモはだんだんと見慣れた景色に変わり、王都までもう少しだと気付く。

 今朝、グルと二人照れてしまうからと、指輪をさわり変化はといていた。

 しかし、昔の家――公爵家付近まで来たことがわかり、エルモは再び指輪を触った。

 いきなり姿をかえたエルモにグル、グレは心配する。

「エルモちゃん?」
「エルモ、平気か?」

「うん、平気だよ。グルさん、グレちゃん、昔、この付近に住んでいたの――あ、あの青い屋根の屋敷が昔住んでいた家だわ」

 二人に指をさして教えると。その屋敷をみてグルとグレは瞳を大きくした。

「スゲェ、エルモちゃん大きな屋敷に住んでいたんだぁ」
「そうだな、デカい屋敷だ」

「まあ、いちおう公爵令嬢だから……ね」

 その家の近くを通るとき、懐かしい声が聞こえた。

(この声……)

 声の先に視線をおくると――淡い黄色のドレスを身につけたお母様が花柄の日傘を差し、知り合いとめずらしく屋敷前で立ち話していた。

 ファーレズを離れてから数ヶ月以上はたっている。
 あの日。エルドラッドに婚約破棄された日――エルモを冷たく睨みつけたお母様の"あの瞳"がいまも忘れられない。
 ギュッっと手を握り、下を向いたエルモの手をグルはやさしくにぎった。

「ありがとう、グルさん」
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