【コミカライズ配信中】婚約破棄したお馬鹿な王子はほっといて、悪役令嬢は精霊の森で幸せになります。(連載版)

二十八

 ほんとうに――ほんとうに彼は嫌な人だった。目の前のアルベルトを見て、さらに学園の頃を思いだす。

 アレは学園の庭園のベンチで王子と、ヒロインが寄り添う姿を遠目に見ていた。

 その横に立ち彼はニヤニヤ嫌な表情を浮かべて見下ろし『君では、リリアには勝てないよ。諦めなよ』と、茶化しながら言った。

 悔しくて、涙が出そうで『貴方に言われなくてもわかっている!』と反論したかった……けど、何も語らずその場を後にした。

 婚約破棄の場面でもニヤニヤと笑い見下していた。

 その嫌味なアルベルトがいま目の前にいる。

(すごく、嫌い――大嫌い!)

「すみません、商品を買わないのでしたら……帰ってください。他のお客様の迷惑になります!」

「おー! 怒った顔も可愛い」
「今晩、俺たちと飲みに行かない?」

「ぜったいに行きません!」

 騎士と言い合うエルモをみて、アルベルトはニヤッと笑った。

 ――ビクッ! 

 アルベルトが何か言ってくるかもと、エルモは身構えていたけど彼はヘラヘラと笑い。うるさい先輩騎士達の背中を押して「うるさくして、ごめんねぇ~」と、店の外にさわぐ騎士達を連れて出ていった。
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