怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
§6.溺愛は必要です!
***

 三日前から喉が痛い。
 (たん)がからんでゴホゴホと嫌な咳まで出てきたので、今朝病院で診てもらったら風邪だと診断された。
 どうやら束縒からうつったみたい。


「社長、ドラッグストアでトローチを買ってきました。喉の痛みが少しでもマシになればいいのですが……」


 九住さんが社長室に入ってきて、私の机の上にトローチの小箱を置いた。
 病院で薬は処方されたものの、そこにトローチは入っていなかったから、九住さんの気遣いはかなりありがたい。
 マスクをあごまで下げ、トローチの箱を開けながら「ありがとうございます」と彼女にお礼を言った。


「長引かなければいいですね。今日はもう帰られたらいかがです?」

「急ぎの仕事だけやっておきますね。夫もすぐに治りましたし、大丈夫ですよ」

「あ、ご主人の風邪をもらわれたのですか。仲がいい証拠ですかね。フフフ」


 九住さんが最後に笑みをこぼしたせいで、私はそれに過剰反応して顔を真っ赤に染めてしまった。
「そこまで仲良くしていないです!」とわざわざ否定するのもおかしいので押し黙る。

 でも、風邪がうつるような接触があったのは間違いない。
 きっと、あのキスが原因だ。

 本当にいったいあれはなんだったのだろう。

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