ツンデレ王子とメンヘラ姫のペット契約

長崎旅行

ひなこは相変わらず、月一回くらい順調に旅行に来ていた。長崎には以前来たことがあったが、その時かなり楽しく、回りきれなかったので今回も長崎になって良かったと思っていた。

裕子はひなこに会うなり、「久しぶりぃ」と威勢の良い声を上げた。ひなこはそれに合わせて「元気だったかぁ」と人懐っこい声を出した。

二人はレンタカー屋に行き、車を借りた。ひなこはそこで裕子がペーパードライバーということを知り、「えぇ」と声を上げた。長崎まで片道が軽く二時間半はかかるのでひなこは弱音を吐いたのだった。

早速二人は車に乗り込み、まずはハウステンボスに向かった。二人は昼に出発したので、ハウステンボスでは夜にある花火を目標とした。

車の中では、早速とばかり裕子が小日向さんのことを聞き出し、「やるねぇ、さすがひなこじゃん」と言った。ひなこも得意げになって「でしょ?」と言った。

裕子は「でもそれで彼氏にまで持ち込めないのがあんたよねぇ」と苦言も漏らした。

ひなこは鋭いなと思いつつ、今度は裕子の話をと裕子に話を振った。

裕子は自分のサークルの同期について話した。そいつとは最近仲良くしており、LINEは毎日返信が返ってきて、さらにたまに電話もするという。

ひなこはその時点でだいぶ仲良しじゃんと思い、普通に羨ましいと思った。そんなに仲良しなのになにが不満なんだと思ってると、裕子は話を続けた。

その同期とは飲み会で隣になり、お互い酔っ払って盛り上がってたという。すると同期は、裕子に向かって、「僕、裕子なら付き合ってもいい」と急に言ってきたらしい。

裕子はそれを聞くと、気まずくなりトイレに行くふりをして別の席に移ったという。

そして後日電話が来た時に、あれは何だったのかと裕子が聞くと、なんとそいつには「僕がそれを言うなら、裕子もそれに返事しないといけなくなるよ」と上手なことを言われ、困ったということだった。

ひなこは一部始終を聞くと、正味返事と言ってる時点で告白とバレてるけどなと思いながら、腕組みをし「なるほどぉ」と分かったような顔をした。実際ひなこにはそいつの対処法が見えていた。

そして、裕子には堂々と「今回悪いのは裕子だな」と言った。

裕子は予想外とばかりに「えぇ、なんでよ」と声を上げた。

そしてひなこはその声を待ってましたと言わんばかりに、横柄に「そいつには質問返しで一撃だよ」と言った。

裕子は質問返し?と首を傾けていたが、ひなこは続けた。

「要は、向こうが質問で来たならこっちも質問で返せってことよ。人間答えにくいことなんて山ほどあるんだから、そういう時にこれを使うの」とひなこは指を立てた。

そして、「今回の場合は、向こうがこっちにおそらく告白の返事をしろと求めてきてるから、それに対して裕子は、じゃあ私も聞くけど、返事をしていいの?と聞けば良いのよ!」とひなこは得意げに言った。また、「まあ、うんって言われたら逃れられないけどね」とも付け加えた。

裕子はそれを聞き終わると、「おぉ、さすが永山大先生」と言い、拍手をした。

ひなこはこの手の駆け引きは得意で、最近は特に使うこともなかったが、久々に披露できたので気分が良かった。

裕子は興奮しながら、「これからはひなこに恋愛相談するわ」と言うので、ひなこは「お安い御用」と冗談めかして言って、二人はゲラゲラ笑いながら車を走らせるのだった。
< 52 / 104 >

この作品をシェア

pagetop