S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす
誰にも渡さないマ・シェリ

 俺が四歳の時、花詠は産まれた。

 彼女が可愛い赤ちゃんだった頃から小学校に上がるまで、会うたびにこの子が許嫁だと教えられていたため、俺はなにも疑問を抱くことなく花詠と結婚するものだと思っていた。当然、恋というものがなんなのかも知らないうちに。

 小学五年生にもなれば、結婚相手は大切にしなければいけないということくらいはわかる。そうでなくても、花詠はおてんばで危なっかしいところがあったから、自然に俺が守らなければという意識を持つようになっていた。

 喜怒哀楽を素直に表し、人見知りせず俺にくっついてくる彼女は、当時から可愛い子だった。他のどの女子よりも。

 元からの性格の影響も大きいが、ついかまいたくなって意地悪をしていた自分は典型的な男子だったなと、今思えば少し恥ずかしくもある。

 ところが、両親たちは次第に不仲になり、いきなり暮泉家とは交流を持つなと言われた。

 話を聞けば、暮泉家とは土地のダブルブッキングがきっかけで仲がこじれ、亀裂はどんどん深まって最終的に絶交状態になったらしい。それまで家族ぐるみで親密にしていたというのに、関係が壊れる時はあっけないものだ。
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