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(3)

「ちょっと、大狼さんっ。下ろしてください!」

「うるさい」

 乱暴にベッドに投げ捨てられ、千真は文句を言おうと顔を上げる。一瞬のうちに駿介の影が重なり、唇を塞がれた。

「……っ、やだ!」

「黙れ」

 顔を背けるが、顎を掴まれ、無理矢理キスをされる。
 舌が入ってきたのに驚いて歯を立てれば、ようやく、唇を離された。

「なにしやがる」

「それは、こっちの台詞ですっ。私、大狼さんがなに考えてるのか、わかりません!」

「駿介だ」

「んっ」

 また唇を押しつけられ、鋭い目で睨まれる。

「なんでまた苗字に戻ってやがる。名前で呼べ」

「だって、それは、大狼さんが……」

 言えば、また口を塞がれた。じわり、涙が滲んで、こぼれるのは一瞬だった。

「ひどい。好きじゃないくせに、どうして、こんなこと……」

「好きじゃねーなら、こんなことするかよ」

「だって、好きじゃないって言ってたじゃないですか!」

「言わなくても判れよ」

「言われなきゃ、判りませんよっ」

 押し問答の末、勝ったのはどっちだったのか判らない。
 駿介のキスが優しいそれに変わったことで、そんなことはどうでもよくなってしまった千真の、負けかもしれない。

 強制的に上を向かされるように顎を掴んでいた手が、柔らかな手つきで千真の髪を撫でるのが気持ちいい。
 窺うように入ってきた舌を、今度は少しだけ弱めに噛めば、離れた駿介が怪訝そうな顔でこちらを見ていた。

「言われなくちゃ、判りません」

「……悪かった」

 啄むように触れるだけのキスをされ、頭を抱えるように抱き締められたのに甘えて、千真は駿介の胸に頭を預けた。

「私のこと、どう思ってるんですか?」

「好きだとかそういうのは、正直よくわからねー。だけどおまえが、俺以外の誰かになにかをされるのは、すげー腹立つ。それが好きだっていうことなら、きっとそうなんだと思う」

「……」

 なんだそれ。返してほしかった答えにはほど遠い答えが返ってきて、逆に呆ける。でも逆に、それが駿介らしいと言えば駿介らしくて、ふにゃ、と顔を綻ばせた。

「もー、なんですか、それ。ずるい」

「嘘は吐きたくないからな」

 キスをされたまま押し倒され、背中が落ちる。
 駿介がシャツを脱ぐのにドキッとして、思わず自分の着ているシャツの裾を掴んだ。
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