離婚前提から 始まる恋
偽家族の終わり

思いが伝わらないままの・・・

「えっ」
驚きのあまり、私は動けなくなった。

「どうするの?旦那さんが待っているわよ」
「そんなこと言われたって・・・」

自宅マンションを出て杏のアパートにやって来て数時間後。
やっと体調も落ち着き、これから夕食の準備でもしようかと思った矢先、杏の部屋に訪れた来客。それは勇人だった。

「私はきちんと話をするべきだと思うけれど、花音が嫌だって言うなら無理強いはしないわ。でも、自分で断ってちょうだい」
「そんなあ・・・」

それができれば苦労はしない。
勇人のあの強い眼差しでまっすぐに見つめられたら、私はきっと逃げられない。
だからここまで逃げてきたのに。

「花音に話があるってことだから、とりあえず行ってくれば?このままこうしていても何も始まらないでしょ?それに、花音だって言いたいことがあるんじゃないの?」
「そりゃあ・・・」
言いたいことはある。
でも・・・

「ほら、行ってきなさい。何なら私も一緒に行こうか?」
「それはダメ」
私と勇人の話は誰にも聞かせられない。

フフフ。
「だったら行ってらっしゃい」

なんだか杏にうまく乗せられた気がするけれど、私は渋々玄関へと向かった。
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