離婚前提から 始まる恋
微妙な距離

秘書も色々

会社で倒れてから1週間が過ぎた。
ただの過労なんだから寝れば治るといくら言っても勇人は聞いてくれなくて、その上尊人さんまで一緒になって説得に掛かるものだから、私は仕方なく10日間の休暇をとることにした。

「ただいま」
「おかえりなさい」

午後7時。
今までだったら絶対に帰ってくることのない時間に勇人の帰宅。
これも過労で倒れてしまった私を気遣ってのことだろう。

「体調はどう?」
「うん、元気よ」

広くて眺めのいいリビングのソファーで横になって一日過ごせば疲れだって抜けていく。
こんな生活を一週間も続けていれば、体がなまる分でも疲労の蓄積なんて考えられない。

「一人で退屈なら実家に帰ってもいいんだぞ」
床の上に積み重なった本を見ながら眉間にしわを寄せる勇人。

普段からテレビを見る習慣のない私は、自宅で過ごす昼間の時間を読書に当てていた。
元々本を読むは好きだし、久しぶりにゆっくり過ごせるのは快適でもあったのに、勇人には時間を持て余しているように映ったらしい。

「いいわよ。どうせあと3日もすれば仕事に戻るんだし、ここでいいわ」
「そうか、ならいいけれど」
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