離婚前提から 始まる恋

旦那様登場

「花音さん、言われた通り自宅の近くまで来ましたけれど、この先はどう行ったらいいですか?」
「え、えっと・・・」
私は頭を抱えながらゆっくりと目を開けた。

拓馬君のお父さんの店で酔いつぶれてしまった私は、そのまましばらく眠ってしまったらしく、気が付いたら日付が変わっていた。
目が覚めて慌てる私を拓馬君が送ってくれることになり、今タクシーの中にいる。

「この道の突き当りを右に行って、次の信号を左。そこで止めてもらえる?」
「了解です」

「拓馬君、迷惑をかけて本当にごめんね」
「いいですよ、気にしないでください。花音さんの寝顔まで見れて得した気分ですから」
「もう、やめて」
恥ずかしくて死ぬわ。

酔いつぶれるのも、男の人に送ってもらうのも初めての経験。
人妻のくせに、私は何をしているんだか。

「さあ、着きましたよ」
タクシーが止まり、先に降りた拓馬君が私の手を引いてくれる。

「ありがとう、ぁ、タクシー代」
「いいですよ。この後僕が乗って帰りますから。それよりマンションの入口まで送ります」
「え、いいよ。入り口はすぐそこだし」
「ダメですよ、深夜に女性を一人になんてできませんから」
「・・・ありがとう」
本当に申し訳ない。
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