離婚前提から 始まる恋

かわいい妻 side勇人

香港と日本の時差は1時間。
当然時差ぼけなんてあるはずもないけれど、今日はやけにすっきりと目が覚めた。
キングサイズのベッドの上で寝返りを打つと、眼下に見える街並みが朝日を反射して神々しくさえある。
普段ならこんなにのんびりと窓の外を眺めることはないんだが、今日はまだこの場所を動きたくない。
その理由は、俺のすぐ横に花音が眠っているからだ。
スヤスヤと寝息を立てる無防備な寝顔は、俺だけが知る花音。
昨夜はずいぶん虐めてしまったから、目が覚めれば小言の一つも言われるかもしれないが、それもまたかわいいとさえ思える。

俺達の結婚は離婚が前提の偽りの物。
まだ若い花音が、親の言いなりになって好きでもない男と暮らすのはかわいそうだと思って提案したことだったが、花音もそれでいいと納得して2人で決めた。
その時期は、お義父さんの選挙まで。
先日その選挙が終わり一度きちんと話をしようと思っていたのに、花音の体調不良などもありズルズルと今日まできてしまった。
ただ、当初から遅くとも2年目の結婚記念日にはって話した記憶があるから、残された時間は長くても8カ月ほどだ。
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