エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
第一章 はじまりは七年前
第一章 はじまりは七年前
今から七年前。
菜摘は二十歳、大学二年生だった。
小さい頃に母親を、五年前に父親を亡くし、父の弟である叔父の和利夫婦に引き取られて暮らしていた。
和利の息子、菜摘にとってはいとこで四歳年上の賢哉は彼女にとてもよくしてくれた。菜摘も実の兄のように彼を慕っている。
ただやはり親戚の家族の中で暮らすと言うのは、大変なこともある。いつも周囲に気を配り、父が残し叔父が継いだ工場の仕事を手伝ったり、家事もこなすようにしていた。
唯一父親が菜摘の学費を残しておいてくれたおかげで、彼女は裕福ではなかったが希望する大学に通え、有意義な学生生活を送っていた。
そして間もなく彼女は、アメリカへの語学留学をする予定になっていた。教育資金をちゃんと残しておいてくれた父に感謝しつつ準備をすすめていた。
恋人の加美清貴と一緒に。
「菜摘、準備はちゃんと進んでいるのか?」
大学の図書館に併設されているカフェテリアで、菜摘はカップに入っている紅茶に口をつけたまま頷いた。