エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
第三章 夫婦ミッション
第三章 夫婦ミッション

 そわそわしながら仕事を終えた菜摘は、定時を迎えるとすぐにパソコンの電源を切り帰宅の準備をする。いつも残業をすることはほとんどないが今日はいつもよりもすばやく片付けていく。

 菜摘が現在派遣社員として働いているのは、大手IT企業の総務部だ。

 アシスタントとして働いていて、残業はほとんどない。社員と派遣社員との扱いの差はなく、とても働きやすい環境だ。社内の公用語は英語なので、得意の英語を使う仕事ができている面でも満足している。

「お先に失礼します」

「はい、おつかれさん」

 五十代の気の良い上司に挨拶を済ませると、菜摘は急いで化粧室に向かって化粧を直し髪をとかした。

(これで平気かな)

 くるっと回ってあちこち変じゃないか確認する。いつもは仕事が終わると変えるだけなので、化粧直しなどせず帰宅するが今日はこれから清貴と共に加美家に夕食に招待されているのだ。

 彼の両親に会うのは結婚すると決めてから、二回目だ。一度目は結婚の挨拶ですぐに帰宅したが今日は食事をする。

 昼をすぎたあたりから緊張をしていて、今それがピークに達しようとしていた。

「はぁ……何も失敗しなければいいけど。あ、いけない!」

 ちらっと腕時計を見ると、約束の時間まであと十分。菜摘は急いでポーチを片付けるとエレベーターホールへと急いだ。

 すぐにきたエレベーターに飛び乗り一階に到着すると、向かってやって来る女性たちが何やらそわそわしている。そして後ろを振り向いては黄色い声を上げていた。

(何かあったのかな?)

 いつもとは違う少し浮ついた雰囲気だったが、受付の片付けをしていた社員の声が耳に入る。

「出たところの通路に、ものすごいイケメンがいるって。これ片付けたちょっと見にいかない?」
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