もっと求めて、欲しがって、お嬢様。
prologue
14歳のとき、私の元に専属執事となる男がやってきた。
私の家は九条(くじょう)グループという、各地にリゾートを構える大きな会社で。
いわゆる“令嬢”として生まれた私は、広すぎる屋敷、メイドや使用人がいる生活、お金には何不自由しない日々。
そんな私も執事を持つ歳になり、そこに現れたのは───
『きょっ、今日から理沙(りさ)お嬢様専属の執事に任命されましたっ、いかっ、碇(いかり)です…!!
よっ、よろしくお願いいたしますっ!!』
“本日より”ではなく“今日から”と言ってしまった時点で、執事としてのランクは低いんだろうなと思った。
聞くところによると執事学校から上がったばかりの20歳だという。
私より6歳も年上だというのに、全身から放出する頼りなさに年下にも見えてしまった。
『下の名前は?』
『しょっ、章太郎(しょうたろう)です…!!』
『…碇のほうが呼びやすいわ。碇、』
『はっ、はいっ!!』
『……一々どもらないでくれる?』
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