もっと求めて、欲しがって、お嬢様。
素直になれない




「ワンツー、ワンツー、そこでターン!」


「わっ、わわわわわっ!!」


「柊さん!足の踏み方がぜんぜんダメ!」



舞踏会が近づくと、熱心な社交ダンスの先生から鬼レッスンの日々。

やっぱりここでも私の友達は先生からため息をお見舞いされているとしても。


足を踏み外して花瓶を割らないだけマシになったんじゃない?

……と、心のなかでフォロー。



「理沙、どうやってタップからターンに変えてるの?」


「身体より曲って感じね。音をよく聞けば自然と身体がついてくるわ」


「……そんなの無理だもん」



確かに緩やかなダンスとは違って、社交ダンスは激しいステップを踏む場面も多かったりする。

こうして友達が真面目に取り組もうとしている姿勢には協力してあげたいと思うから。


休憩中の時間も、私はバカエマの練習に付き合ってあげていた。



「でもさ理沙、本番は男の人となんだから練習で女の子と踊ったって体格差がぜんぜん違って意味ないと思うのにっ」


「……それはあるかもね」


「ねっ、ねっ、そうだよね…!」



私たちの会話を聞いていたクラスメイトたちも、なぜか今日に限ってうんうんと賛同だった。



< 80 / 212 >

この作品をシェア

pagetop