干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

新しい任務

 俊介は、社長室の前で一旦短く息を吐くと、隣に立っている部長の顔を振り向く。

 部長もいつになく、緊張した様子だ。


 イベントの最終日、俊介は父親である社長の元を訪れていた。

 社長が条件として提示していた“引き抜きの首謀者の証拠”を持って。

 しかし意外にも社長は、その場では俊介からの証拠を受け取るのみで、後日部長と共に自分の元に来るように告げるだけだった。


「じゃあ、行きましょう」

 その声と共に、俊介は扉を力強くノックする。

 開かれた扉の先では、社長がデスクで眉間に皺を寄せて座っている様子が、目に映った。


 ――今日は、朔人はいないな……。


 俊介は、注意深く室内を確認する。

 部屋の中には、社長と秘書以外の姿は見えなかった。

 二人が前に立つと、社長は厳しい目で俊介と部長を交互に見つめた。


「お前から預かったものを確認した。これは事実なんだろうな」

 社長の低い声が、音のない部屋に響く。

「はい。間違いありません。お渡ししたものは、トータルグリーンから手に入れたメールのコピーです。元々トータルは、グリーンレンタル業界二位のうちの存在が邪魔だった。そこへ専務から内密に、吸収合併の案を持ちかけられたそうです」
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