干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

鷺沼由紀乃

「おぉ! 来た来た」

 俊介が社長室に入ると、やけに機嫌のいい社長に出迎えられた。

 来客中なのか、社長室のソファには誰かが座っているのが見える。


「こちらが息子の俊介です」

 社長は立ち上がると俊介を手招きし、ソファに腰かけている二人に紹介する。


 ――息子……?


 突然父親の顔をする社長の言葉に、俊介は大きな違和感を(いだ)きながら隣に立った。


 見ると目の前のソファには、父と同じくらいの歳の男性と、俊介よりも年下に見える若い女性が座っていた。

「いや、これはこれは。立派な息子さんで」

 男性はにこやかな笑顔で頷いている。

「さぁ、座りなさい」

 父に言われるがまま、俊介はソファに腰かけた。


 目の前の恰幅(かっぷく)のいい男性は、羽織袴(はおりはかま)の和装姿でまるでお茶の先生の様な出で立ちだ。

 隣の女性は、この男性の娘だろうか。

 頬をピンク色に染めながら、下を向いて緩やかなウェーブのかかった長い髪をそっと耳にかけている。


「俊介。こちらは鷺沼(さぎぬま)造園の鷺沼社長と、一人娘の由紀乃(ゆきの)さんだ」

 父に促され、俊介は目の前で尊大に構える男性と、しとやかに座っている女性に挨拶をした。
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