干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

策略

「ちょっと失礼」

 俊介はエレベーターのボタンを押した後、由紀乃に声をかけるとサッとスマートフォンを取り出した。

 すぐに画面をタップして、美琴の番号を表示させる。

 呼び出し音は何度か鳴ったが、美琴は気がつかないのか電話には出なかった。


 ――温室で作業してるって言ってたからな……。また夢中になってるのかもな。


 ポンと音が鳴り、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。

 俊介は由紀乃と共に中に乗り込む。


「……急に観光なんて、申し訳ありません」

 由紀乃が恥じらいながら、上目づかいで俊介を見つめている。

「いえ。お気になさらず」

 俊介は淡々と静かな声を出した。


「映画の壁面装飾、とても素敵で見入ってしまいました。映画のイメージにぴったりで。あれは俊介さんが考えられたんですか?」

「いえ、あれはうちのメンバーが……」

 俊介がそう言った時、スマートフォンが着信を告げた。


 俊介が慌てて画面を見ると、美琴の名前が表示されている。

「ちょっとすみません」

 俊介は由紀乃に軽く手を上げ、壁際に移動して画面をタップした。
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