干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

展示会当日

 展示会は国内最大級の規模という事もあり、開場前から入り口付近は多くの人で賑わっている。

「じ、じゃあ友野さん、僕たちは先に戻ってるね」

 メンテナンスの道具を片付けながら、滝山が遠慮がちに声を出した。

「うん。気をつけて」

「何かあれば、すぐに連絡してくださいね」

 笑顔で手を振る美琴に見送られ、滝山と胡桃は会場を後にした。


「友野さん。二日間とも会場に残るって、大丈夫ですかね?」

 駅までの道を歩きながら、胡桃が滝山を振り返る。

「うん……。たぶん、待ちたいんだと思うよ。副社長のこと」

 滝山は下を向きながら、静かに声を出した。


「ふーん。滝山さんって、友野さんにすごく理解がありますよね。まぁ、部長もですけど」

「そ、そうかな……。でもきっと東さんや、それこそ副社長だって同じだと思うよ。泥船だったプロジェクトを、全力で引っ張って来たのは友野さんだからね」

「なんかカッコいいですね」

 胡桃は両手を上げて伸びをしながら、あどけない表情で笑っている。


「ま、まぁ、最初から一緒に戦ってきた仲間だからね。だから……」

 滝山は、日差しに目を細めながら空を見上げた。

「だから、幸せを願ってる……」

 そう言った滝山の横顔は、コミュ障くんなどと呼ばれていたのが嘘のように、真っ直ぐで力強かった。

 胡桃はその横顔に目を奪われ、慌てて目を逸らすと一緒に空を見上げた。
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