干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

動き出す

 温室に入った美琴は、大きく両手を広げて深呼吸をした。

 ――やっぱり、このマイナスイオンたっぷりの、しっとり潤った空気感は格別だなぁ。


 ラジオ体操の様に伸びをしていると、隣からくすくすと笑い声が聞こえてきた。

「ふ、副社長……」

 美琴は顔を真っ赤にして、慌てて手を下げる。

「ここの空気は、僕も好きですよ」


 さっき朔人と対面していた時は、険しい表情をしていた副社長だが、今の顔つきは落ち着いている。

 美琴は、その顔を見て少しほっとした。


「ほら。副社長も一緒にやってみません? すっごい気持ちいいですから」

 美琴はガニ股で、手を上下に大きく動かした。

「いえ……」

「ほらほらー」

「遠慮しときます……」

 二人で笑っていると、誰かが近寄ってくる気配がしてふと振り返る。

「あ、宮さん」

 歩いて来たのは、温室の管理をしている、ベテランスタッフの宮本だった。
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