干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

新たなスタート

 美琴は副社長室のソファに浅く腰をかけ、膝に手を置いて下を向いていた。

 副社長もデスクの椅子に座り、さっきからずっと顔の前で手を組んだまま動かない。


 コンコン!


 重苦しい空気を吹き飛ばすかの様な、大きなノック音が響いた。

「部長!」

 扉から顔を覗かせた部長に、美琴は思わず駆け寄った。

「おう。干物。うまく行ったぞ」

 ブイサインを見せながら部長が笑う。


 その言葉に、わぁっと部屋の中の空気が、一気に明るくなった。

「良かったぁ」

 目を潤ませ見上げる美琴の頭を、部長がぽんぽんと優しく撫でた。

「干物のおかげだな……」

 部長はすっきりとした顔つきをしている。

「部長――」


 ゴホンッ!


 部長を見上げる美琴の隣に立ち、副社長が大きく咳ばらいをする。

 美琴は、はっとして慌てて背筋を伸ばした。


 遠くの方で、東の押し殺したような笑い声が聞こえている。
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