エリートSPと偽装婚約~守って、甘やかして、閉じこめて~
君を一生、守らせて
後日、わたしたちは無人島に向かうクルーザーに乗っていた。

島へは梧桐の所有するクルーザーで。泊まる場所は慧さん名義の別荘だ。
慧さんは船舶免許も持っているらしいが、今回は運転手がついていた。

無人島の別荘といっても、梧桐おかかえのシェフと使用人が数人付いてきている。

船内はふかふかのソファ付きのサロンに、キッチン、それに部屋もたくさんあって、プールまでついている。
ここで寝泊まりしても十分というほど豪華だ。
船内の探索を終えて、船上のデッキで風と景色を楽しんでいた。

デッキにも食事とカクテルが用意され、優雅な時間を堪能できる。

水面からはね返る日射しが眩しくて、目を細めた。

互いの夏休みを利用しての、気分転換を鑑みた旅行だ。
晴れて正式に婚約者となったわたしたちの、婚前旅行とも言える。

旅行といっても、わたしはどうしても人目が気になってしまうので、人目が気になるなら、誰もいないところへ行こうというのが慧さんからの提案だ。

いつも誰かに見られているかも知れないという脅迫観念は、今まで色々と仕掛けてきた犯人である理央が捕まったからと言って、簡単に切り替えられるものではない。


「慧さん、あまり身を乗り出すと落ちますよ」

ふたりで海を見ていると、貫禄たっぷりな使用人が声をかけた。白髭のおじいさんだ。

「わかってるよ」

慧さんがムスッとしながら返事をすると、使用人はすっと姿をくらました。気を使ってくれているらしい。

「あいつ、俺をいくつだと思っているんだ。いつまでも子供扱いして」

「ふふふふ、慧さんが負けてる」

慧さんが生まれる前から仕えている大ベテランの方だそうだ。
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