モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
第一章 異世界に来ました

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 ――北山春香(きたやまはるか)二十二歳、恋愛、初黒星です……。
 その日、仕事を終えた私は、がっくりと肩を落としながら駅へ向かって歩いていた。
 この春、IT企業に新卒入社した私は、同期のイケメン・増田(ますだ)さんをロックオンしていた。だが本日、ものの見事にふられたのである。増田さんは有名大卒で、性格も明るくハキハキしていて、営業部の有望若手と噂されていた。だからこそ、絶対にゲットすると決めていたのに……。
(ううん、ゲットできると思い込んでた)
 自慢じゃないが、私の見た目はかなりイケている。生まれつき茶色がかったふわふわの髪に、ぱっちりした瞳、長い睫毛。それに何より、モテテクにかけては、誰にも負けない自信があるのだ。『あざと可愛い』なんて陰口を叩かれることもあるけれど、男性の心を惹きつける術は、知り尽くしていたはずなのに……。
 おまけに、と私は、ガクンとさらに肩を落とした。増田さんが選んだのは、同じ同期の榎本真紀(えのもとまき)だったのだ。職種はSEで、仕事はできるが、色気も可愛げも無い地味女子である。
(納得できなーい!)
 ぶんぶん、と私は激しく首を振った。ここで引き下がってなるものか。絶対に、奪ってやる。そう決意した私は、前方に見覚えのあるシルエットを見かけた。何と、当の榎本さんではないか。
(チャンスだわ。敵情視察してやる)
 私は、人混みを縫って榎本さんに近付いた。わざと明るい声を上げる。
「榎本さん、ぐうぜーん! 駅まで、一緒に帰ろっか」
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