モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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「というわけで、お前もそう見えるよう、努力せねばな……。まあ、見た目はここへ来た時よりも、かなり見られるようになったが。ドレスと髪型のせいか」
 あっさりと、グレゴールが言う。私は、眉をひそめた。
「髪型? これがいいと?」
「そりゃ、そうだ。この国では巻き毛は、幼さの象徴と見なされている。だから、生まれつき巻き毛の者は、できるだけ短く切るのだ」
(……そういうことだったんだ)
 ようやく、メルセデスの行動の謎が解けた。確かに、クリスティアンにグレゴール、メルセデスらは、全員ストレートヘアだ。
 私はグレゴールの、後ろできっちりと一つにくくったダークブラウンの髪を見つめた。思慮深そうな彼の顔立ちに、よく合っている気もする。
「何だ」
「あ……、いえ」
 まじまじと見つめすぎていたことに気づき、私は慌ててかぶりを振った。それにしても、とグレゴールが続ける。
「お前が来た時の、あのくるくる髪はひどすぎた。気は確かかと思ったぞ」
 さすがにそこまで言うか、と私はムカッとした。
「私のいた世界では、あの髪型が人気だったんです! ほら、こういう動作って、可愛いじゃないですか」
 長かった頃やっていたように、かきあげる真似をしてみたが、この短い髪では全然様にならない。ピン、と跳ねただけだ。案の定、グレゴールは怪訝そうな顔をした。
「どこが可愛いのか、さっぱりわからん。邪魔くさそうだとしか思えんが」
「でも、男の人にはそう言われました! 女性はみんな、こういう髪型でしたよ?」
「マキ殿は、違うではないか」
 うっと、私はつまった。確かに榎本さんは、ショートカットだ。今の私より、短いくらいだけれど……。
「そりゃ、ああいう髪の女性もいますけれど。でも、男性には人気無いですよ」
 ショートの女優やモデルもいるが、悔しいので内緒だ。だがグレゴールは、ますます不思議そうな顔をした。
「マキ殿が、人気が無いと? 信じられん。彼女は、とても魅力的ではないか。性格も気持ちが良いし、頭の回転も速い。早くも、聖女としての活動を開始したくらいだ」
「そうなのですか?」
 確かに榎本さんは、仕事は良くできたけれど、と私は会社での彼女を思い出した。
「ああ。クリスティアン殿下も、有能な聖女が来てくれたとお喜びだ。俺も、呼び寄せた甲斐があったというものだ」
 私は、何だか不安になってきた。まさかとは思うが、王子は榎本さんを好きになったりしないだろうか。ただでさえ、モテ基準が大分違うらしいこの世界だ。増田さんに続いての連敗は、避けたかった。
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