モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
第三章 あざかわ女子になった理由、打ち明けます

1

 翌朝、自室で目覚めると、昨日の侍女がやって来た。ハイジといい、今後私に付いてくれるのだという。よろしくと挨拶しながら、着替えを手伝ってもらっていると、慌ただしいノックの音がした。メルセデスだった。
「早くにごめんなさいね! 仕立屋を呼んで、あなたのドレスを作らせるから、その相談をしようと思って」
 メルセデスは、せかせかと告げた。
「本当は、昨日のうちにしたかったのだけれど、あいにくパーティーに行かなければいけなかったから。さ、打ち合わせしましょうか」
 メルセデスは、ずいぶんとせっかちな性格のようだ。でもその前に、と私は彼女の方を向いて姿勢を正した。
「お気遣い、ありがとうございます。それから、ドレスも貸していただいて……。でも、打ち合わせの前に少しいいですか」
 私は、メルセデスに向かって深々とお辞儀した。
「昨日は、失礼なことを申し上げてすみませんでした。実は私のいた世界では、女性は年より若く見えるというのが褒め言葉だったのです。それでメルセデス様にもそう言ってしまったのですが、後でグレゴール様から、こちらでは大人びて見えることが賢い証拠だと聞きました。お気を悪くされたのではと、気にしていました」
「あらっ、そうだったの? あなたの世界では、あれが褒め言葉?」
 メルセデスは、興味深そうに目を見張った。
「はい、ですからその、あれはお世辞のつもりで申し上げたのであって、メルセデス様は決して、お若く見えるということはありません。昨日の発言は、どうか忘れていただければと……」
「何だ、そうだったのね。だったら気にしないから、あなたも忘れてちょうだい」
 メルセデスは、軽く手を振った。
「それに、それを言うなら、私の方が失礼なことを言ったわ。あなたに、年より幼く見えると言ったじゃない?」
「あー……」
 この世界では、よく考えたら侮辱なわけだ。メルセデスが、決まり悪そうに笑う。
「それに。いきなり髪を切ったりして悪かったわね。グレゴールから聞いたわ。大分しょげていたみたいだって。ちゃんと、ここでの世界観を説明すべきだったわ」
 え、と私は意外に思った。私のパーマヘアをボロクソにけなしていた彼だが、私の内心に気付いていたのか。それも、気にかけてくれるなんて……。
「……あれ、時間が経てば真っ直ぐに戻るものなんです」
 ぽつりと言えば、メルセデスは青ざめた。
「そうだったの!? なおさら、ごめんなさい!」
「いえ。私も、失礼なことを言いましたから……」
 メルセデスは、それを聞いて少し思案すると、にこりとした。
「じゃ、お互い謝ったことだし、これでチャラにしましょうか」
 私は、何だか気が抜けるのを感じた。
(メルセデス様って、すごくさばけた人……)
彼女がモテるというのが、わかる気がした。顔立ちだけでなく、内面に魅力を感じる。
(『サバサバ女子』ってずっと嫌いだったけど。この人は、好きになれそう……)
< 15 / 104 >

この作品をシェア

pagetop