モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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 わけのわからない感情が、私を襲う。それを振り払おうと、私はあえて明るい声を上げた。
「でも、こちらの世界へ来て、私、ちょっと良かったかなって思ってます。今言ったように、『サバサバ女子』ってずっと苦手だったんですけど。でもメルセデス様を見ていると、さばさばした女性でも、いい人っているんだなあって思いました。ここへ来て、初めて信頼できる女友達に出会えた気がします」
「……そうか」
 グレゴールが、ふと当惑したような表情を浮かべる。私は、ハッとした。
「あ! すみません。メルセデス様みたいな身分の高い女性に『友達』だなんて、失礼ですよね」
 いや、とグレゴールはかぶりを振った。
「それは構わない。むしろ、こちらの勝手な事情で召喚してしまったというのに、居心地良く感じてくれているようでほっとした」
 そこでグレゴールは、私を見て微笑んだ。
「ところで、提案なのだが。このように時々、俺と喋る時間を設けないか」
「喋る?」
 私は、目を丸くした。
「ああ。ダンスや勉強は教師から学べば済む話だが、基本的な価値観の違いは、こうしてじっくり話さんとわからんだろう。来る舞踏会に向けて、お前が場違いな言動をしてしまわないよう、日々の会話の中で俺がチェックする」
「舞踏会、近いんですね!?」
 私は、心浮き立つのを感じた。
「うむ。場慣れをせねばいけないからな。その前には、ダンスの仕上がりも見てやろう」
「えーと……」
 まさか、と思った。グレゴールが頷く。
「実際に俺と踊ってみる、ということだ。どのみち、エスコート役は俺だからな。俺と予行練習しておくのが、賢明というものだろう」
「わかりました」
 そう返事をしながら、私はなぜだかドキドキするのを感じたのだった。
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