モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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「あの、グレゴール様。側妃計画、カロリーネ様にバレていましたよ。彼女、とても自信がおありのようです」
「ああ、嗅ぎつけたからこそ、今日無理やり参加したのだろう」
 グレゴールは、さして驚く様子もなかった。
「そして、俺がいない隙にカロリーネがお前を偵察するのは、前もって兄妹で計画していたのだろう。実はエマヌエルが、クライン公爵に難癖を付けてな。こちらも公爵には、お前のことを頼んだりと世話になっているから、無視もできない。仲裁に入っている間、お前を放ったらかしにしてしまったんだ。すまなかった」
いえ、と私は小さくかぶりを振った。
「ちなみに、難癖とは?」
「出された飲み物に蝿が混入している、と。こちらも、自作自演だ」
 反社並みだな、と私は呆れた。
「まあ、あの兄妹のことはもう忘れろ。お前は今日、ダンスも社交も上手にこなせていた。自信を持って、引き続き側妃を目指して頑張れ」
「……」
 これまでなら喜べていたであろうグレゴールのその言葉は、今の私には重くのしかかった。
 ――それは、あなたが王室を牛耳るためですか。
 ――もし側妃になれなかったら、私を売るのですか。
 聞きたいのに、答が怖い。黙り込んでいると、グレゴールは思い出したように言った。
「ああ、でも。忘れろとは言ったが、エマヌエルには警戒しろよ? 女には、だらしのない男だからな」
 はい、と私はこっくり頷いた。
「俺とあいつは、色々因縁があるからな……。余計に執着するかもしれん」
「それ、カロリーネ様から伺いました。学生時代に、勉強で勝てなかったからと」
「そうか」
 グレゴールは、苦笑した。
「今から思えば、一科目くらい譲ってやればよかったのかもしれんが。俺も若かったから、わざと負けるなどできなくてな」
「一科目譲ってあげたくらいで、解決するとは思えませんけど。あの方、割と屈折してそうです」
 グレゴールは、私の目を見ると、愉快そうに笑った。
「確かに、そうかもな。ハルカは面白いことを言うな。……ま、とにかくエマヌエルに対しては、気を緩めるなよ」
「わかりました」
 グレゴールの笑顔と、伝わる温もりが心地良い。それでも私は、一抹の不安を感じていた。
(グレゴール様のこと、信じていいのよ、ね……?)
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