モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

3

「よかったな。殿下は、お前をお気に召した様子だ」
「そう……ですかね?」
 確かに、来た当初と比べれば、格段の差だけれど。するとグレゴールは、こんなことを言った。
「殿下は、興味のない女は一瞥もなさらない。お前のことはかなり熱心に見ておられたし、何より、笑みを投げかけられるなど、滅多になさらないことだ。よかったな、ハルカ」
 満足そうなグレゴールを見ていると、私はもしやと思った。
「ひょっとして、狙っていました? 殿下と、遭遇するように」
「その通り」
 グレゴールは、けろっと答えた。
「もちろん、お前をマキ殿に会わせるのが主目的だが。だが、せっかく努力して磨いたのだから、その成果をお見せできれば一石二鳥だろう? 殿下が治療にいらっしゃる時間は、把握しているしな」
 再び、心に暗雲が立ちこめ始めた。
(やっぱりこの人は、私を側妃として送り込むことしか、頭に無い……?)
 だからどうした、と言われても、返答に困るけれど。王太子殿下の側妃といえば、名誉ある地位だ。殿下ご本人もイケメンで、不満要素は無い。
(だから、ある意味グレゴール様とは、利害が一致しているわけだけれど……)
 このわけのわからないモヤモヤは、何なのだろう。黙り込んでいると、グレゴールは怪訝そうにした。
「どうかしたか?」
「いえ……」
「なら、行くぞ」
 グレゴールが、スタスタと歩き出す。私は、仕方なく彼に従った。
 榎本さんの部屋は、宮殿内の片隅にあった。かなり広そうだ。聖女ともなれば、待遇がいいのだろう。
 どんな装いをしているのかな、と私は期待した。私みたいに、華やかなドレスを着ているのだろうか。正直、ボーイッシュな彼女のドレス姿って、想像しにくいのだけれど……。
「マキ殿。失礼するぞ」
 ノックをして、グレゴールが声をかける。やがて出て来た榎本さんを見て、私は目を疑った。彼女は、この国に来た時と同じ、パンツスーツ姿だったのだ。
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