モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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「は!? 違うし」
 私は、仰天した。
「確かにグレゴール様のお屋敷には住まわせてもらってるけど、そんなんじゃないから!」
 慌てて否定したのだが、榎本さんはますます訝しげな顔つきになった。
「そうなの? てっきり、そうだとばかり思ってたんだけど。だってグレゴール様は、こちらに来られる度に、北山さんのことを話されるよ? すごく熱心に勉強しているって。国の地理について、三日でマスターしたんだって、嬉しそうに喋っておられたわ。とっても優しい眼差しでね」
 そんなことは、初耳だった。私は、唖然とした。
「それにこの前いらした時は、ハルカの趣味や好きなことは何だって、聞いてこられたの。このところ元気が無いようだから、何かしてやりたいんだって。確か北山さんは、映画が好きだったなって思い出したんだけど、この世界には無いし。だから、観劇はどうですかってアドバイス差し上げたんだけど」
(それで、芝居にこだわっていたんだ……)
 私は、行きの馬車内でのことを思い出していた。
「だから、てっきりお付き合いしているのかと思うじゃない?」
「いや、そんなんじゃ……。グレゴール様は、私を手違いで一緒に召喚してしまったお詫びで、世話を焼いてくださっているだけだから」
 ごにょごにょ言い訳していたその時、ノックの音がした。グレゴールかとドキリとしたが、顔をのぞかせたのは、侍女風の見知らぬ女性だった。
「マキ様。おくつろぎのところを、申し訳ございません」
 女性は、青ざめていた。
「クリスティアン殿下のご体調が、突然悪化されまして。至急、いらしていただけますか?」
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