極甘恋愛短編集

なにもできない

カレーだけ作ったらすぐに帰る。


自分でそう決めて私は京野さんの家にお邪魔をしていた。


男の子は昼からなにも食べていなかったようで、お腹がペコペコで今にも死んでしまいそうだったと、熱弁している。


「どうしてお昼を食べなかったの?」


もしかしてさっちゃんさんはなにも用意して行かなかったんだろうか。


おかずとか、お金とか。


「お金をもらってたんだけど、ゲームに使っちゃって」


男の子は説明しながらもカレーから視線を外さなかった。


さっきからすごい勢いで食べている。


「明日の分とか、明後日の分は?」


「それは冷凍庫に入ってる」


それならよかったと胸をなでおろしたのもつかの間、ふと食べる手を止めたかと思うとジッとこちらを見つめてきた。


「どうしたの?」


「冷凍食品の作り方がわからない」
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