ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
プロローグ




「りい先生、それ終わったら今日は上がっちゃって」


「えっ、まだこれから保護者会で使うプリント作成と来週の音楽会での───」


「私がやっておくから。だって今日、早番だったでしょう?」



17時が近づけば、延長保育以外の園児たちはとっくに帰宅済み。



「というより、若い先生にやらせ過ぎると園長先生がうるさくって」



ホウキと塵取りを手にして教室の掃除をしていた私に、先輩職員が顔を渋らせた。

無理に居座るわけにもいかないため、大人しく「わかりました」と返す。



「りい先生、プール開きどうだった?とくにゆり組は賑やかだから大変だったんじゃない?」



職員室に入って自分のデスクへ向かうと、また別の先輩がパソコンを操作しつつ休憩がてらに話しかけてくる。

まだ社会人となって2年目の自分は、周りから可愛がってもらっている自覚はあった。



「みんなはしゃいで楽しそうにしてました。でもぜんぜんプールから上がってくれなくて…」


「やっぱり?うちの組も着替えに時間とっちゃって、次の時間まで被ってグダグダよ」


「あはは」



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