ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




『浅倉くんは…、脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)という、“SMA”と呼ばれる病気の疑いがあります』



母親は腰から砕けるように座り込んで、父親は言葉なく立ち尽くしていた。

俺はぼーっとしながら『もう病院は当分いいや…』なんて考えてしまっていて。


小学生の頃から急な激しい運動をしたわけでもないのに、筋肉痛が続くような症状があった。


それまではとくに気にしていなかったけど、中学卒業前にたまたま足首を捻ってしまって、ちょうど一石二鳥だし接骨院に行ってみよう───。


そんな軽い気持ちが整形外科に移って、そこから診療所、またまた市立病院にまで案内されて。

すると今度は大学病院でMRIをはじめとした精密検査、でも最終的に選ばれたのは血液検査で。


───診断結果が渡されたのは高校1年生、夏休みのことだった。



『せ、せきずいせい……?』


『はい、脊髄は人間の脳に直結している中枢神経のことです。
浅倉くんの身体は、そこにある運動神経細胞の異常によって起こる筋萎縮症の───』


『ちょ、ちょちょちょっと待ってください。そんなに一気に言われても分かるわけないじゃないですか…』



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