ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
エピローグ




「あおちゃんせんせっ、さよーならっ」


「さようならヒロくん!泥だんごは先生がちゃんと守っておいてあげるから安心してね」


「うんっ!あおちゃんせんせいありがとっ」



「今日もお世話になりました」と、まだ若いお母さんは、私が担当する組の園児でもある男の子と一緒に挨拶。

私もにっこり微笑んで、同じようにペコリと返す。


15時10分。
保育園に保護者がお迎えにくる時間だ。



「あおちゃん先生…か。あれもうヒロくんのなかでは定着しちゃったかな」



呼び名というのは、園児たちとの距離が詰まれば詰まるほどに崩れていくものなんだと。


この時代に“絶対こう呼びなさい”という教育はご法度。

子供たちが伸び伸び安心して成長できることがいちばん───それが、私が個人的にも掲げる教育方針だった。



「りい先生、こんにちは」


「あっ、こんにちは!千明(ちあき)くんお母さんがお迎えに来たよ~」



保育園の玄関にて、子供たちはリュックを背負って器用に自分で靴を履き替える。

そんななかに千明くんはいないようで、お母さんに一声かけてから私は教室へと向かった。



「あれ…?さっきまでいたはずなんだけど…、千明くーん?どこ行っちゃった~?」



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