ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。

行きたい世界





うっすらと地面に敷かれるほどの雪が降った珍しい朝。

教室に入った瞬間、窓際の席に座る男の子を目にすると嬉しくなる。



「おはよーっ」


「あっ、李衣きた~。おはよー」


「李衣あけおめ!」



クラスメイトに挨拶をして、同じように返ってきて。

そのなかでも彼が振り向いて、柔らかい目に変わったとき。


いちばんの幸せを感じることができる。



「おい青石!校門前の雪だるま見たか?」


「へ?雪だるま?」



バスケ部である北條 拓海は、私を待ち構えていたように食いぎみに聞いてきた。

部活動の朝練がない日はろくなことをしてくれないのが彼でもある。



「……あ!そういえば小さくてすっごい不恰好なやつあったかも!」


「ふはっ!それお前な!」


「え、」


「俺が作っといてやったわ!チビで不恰好とは、自分でよく分かってんじゃねーの!」



ほら、思ったとおり。

いつもいつも私にちょっかいを出してくる北條くん。

きっと悪気はないんだろう、だからこそクラスメイトも遠慮なく笑ってくる。



「……」


「悪かったって、拗ねんなよ青石。確かにみんな“ひでぇ”っつってたけどな?俺は愛嬌があっていいと思うぜ?」


「嬉しくないよっっ!」



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