俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
「こんにちは。忙しそうだね。」
声をかけられ振り返る。
「こんにちは。いらっしゃいませ。」

えっ⁉︎この人……この前の……⁉︎
びっくりして固まる。

「すいません、みかんパフェって出来ますか?」
バリトンボイスの良く通る声でパフェを注文される。

イケメンが1人でパフェ…
良く分からない思考に陥りながら、冷静に笑顔で応対する。

「かしこまりました、少々お待ち下さい。」
お代をもらってパフェを作り始める。

「この店1人でやってるの?」
気さくに声をかけてくるイケメンさんに、内心ドキドキしながら平常心を心掛けて答える。

「はい。普段は1人でやっています。こんなに混むイベントばかりでは無いので、今日は人出が多くてびっくりしてます。」
営業スマイルで応対する。

「大変だったら、手伝おうか?」
いきなりの提案にびっくりする。

「あっ…決して怪しいものでは無く。」
そう言ってイケメンさんは1枚の名刺を差し出してきた。

「cafeの社長さん…。」
やっぱりこの前ぶつかった人だ。しかもcafe経営者…。

「堀井と申します。
…実は貴方のパフェに興味があって、今日は来ました。」

「…私のパフェですか?…あの、私の作るものなんて趣味みたいなもので…。」
語尾が小さくなってしまったのは、彼の真剣な顔と期待のこもった眼差しが眩しかったから…。

「みかんってパフェにするには難しい素材で、うちでも研究を重ねているんですが、なかなかこれと言った物が出来なくて、参考までに食べさせて頂きたい。」

完成したパフェを出せず恐縮していた私に、堀井さんは笑顔で手を差し出してくる。

お代も頂いてしまったし…渡さない訳にもいかないと、おずおず差し出す。

「ありがとう。」
そう言って嬉しそうに微笑んで、堀井さんは目の前で一口パクッと食べ出した。

心配になって私は俯き加減になる。
「美味しい。そんな心配そうな顔しないで。」
困った顔でそう言ってくれる。

「このみかん甘くて、シャリシャリ感があっていいね。生クリームも甘さ控えめでバランスもいい。」
凄く褒めてくれてホッとする。

「みかんは薄皮を溶かして、チルド冷凍した物を使っています。」

「良く考えられているね。
凍らせる発想は無かったから凄く良いと思う。」
全部一気に食べて堀井さんは、優しく微笑んでくれて、少し警戒心が解ける。

「あの……注文いいですか?」
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