俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する
目が眩むように眩しくて、果穂は目を細める。
翔が果穂の手を引きながら、何気なく前に立って、光を遮ってくれる。
目が慣れて来てガラス張りの外を観る。

「うわぁー。空が近いですね。」

「たまに霧が出ると、上の展望台辺りが見えない時がある。」

「こんなに高いんですねー凄い…。」
果穂にとっては全てが新鮮で感動してしまった。展望台を回って景色を堪能する。

果穂は無意識だと思うが、ずっと繋いでいた翔の手を引っ張って歩く。

翔は微笑みながら果穂の後を着いて歩く。

従業員達は、そんな微笑ましいカップルを、尊い眼差しでチラチラと見守っていた。

「あっ!翔さん、見て下さい。富士山です。」
そう言って、振り返ると翔さんが思ったよりも近くにいて驚いてしまう。

「富士山はここから結構近いんだな。」
翔さんも、表情からは分かりにくいけど、思いの外、食い入るように景色を観ている。

「綺麗だな…。」
そう言う翔さんは青い空と雲をバックに、まるで天界人みたいと、果穂は思わず見惚れてしまう。

あっ、写真撮るの忘れてた。
急いでスマホを取り出し富士山を見ている翔さんを撮る。

カシャ。と鳴って、翔さんがこっちを見る。
「えっ、今撮った?」

「はい、凄く絵になってたので撮らせて頂きました。」

「今のはダメだろ。すっごい気抜いてたから…。せめて撮る時は撮るって教えてくれないと。」

「写真は自然体がいいんですよ。
大丈夫です。すっごくかっこよかったですから。」

「いやいやいや、ちょっと確認させて。」

「全然素敵でしたから大丈夫ですって、私だけの宝物にしますから、誰にも見せません。大丈夫です。」

「果穂が見るからには、まともな写真じゃ無いとダメなんだよ。」
翔さんがスマホを奪おうとしてくるから、可笑しくなって笑ってしまう。

スマホを奪われないように、両手で持ってお腹の前に隠す。
それでも翔さんは、後ろから抱きしめる様な形でスマホを奪おうとしてくる。

「そんなに気になりますか?」

「次会う時まで、ずっと見られると思うと嫌じゃ無いか?」

不意に頬にチュッとされて、びっくりして手の力をゆるめてしまう。

「あっ……ズルイです。」
スマホを奪われてしまった。

「消さないで下さいね。」
今後は私がムキになって取り返そうと手を伸ばす。

翔さんは、私が背伸びしても届かないくらいの場所で、スマホを操作して写真を確認する。

「お願い消さないで…。」
祈る様に見上げてしまう。

果穂は、後ろから抱きしめられている事さえ気付かないくらい必死だった。

「うーん。逆光気味だから、オッケーにしてやるか。」
手元にスマホが戻って来てホッとする。

ホッとしたのも束の間、あれ?何だこの体制は……?

後ろから抱きしめられている。やっと今の現状に果穂は気付く。

「か、翔さん……ち、ちょっと離して下さい。」
真っ赤になって小声で訴える。
心臓がドキドキと高鳴ってしまう。

「嫌だね。人が来るまでこのままでいたい。」
翔は一向に離してくれ無い。

「たまに翔さん意地悪です……。私を困らせて楽しんでませんか?」

ハハッと楽しそうに笑って、
「どさくさに紛れて果穂に触れていたいだけだよ。」

「ほ、ほら、翔さん…従業員の人がチラチラ見てますから…。」
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