溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
12、彼女がたまらなく愛しくて Side Kouta


 病院を出ようとしていたところで、救急から緊急オペの要請が入った。

 大動脈解離──大動脈に亀裂が入り、血管が裂ける疾患。

 心臓近くの大動脈が解離し、緊急のオペが必要になったのだ。

 当直のドクターが電車の遅延で遅れていて、他にいるのはオペで助手の経験しかない研修医のみ。それでは対応できないと、自分が執刀する流れになった。

 約束時間の十八時を大幅に超え、しかも連絡もできなかったことに、慌てて連絡を入れる。

 しかし、スマートフォンを手にできたのはすでに十八時四十分過ぎ。

 コール二回で千尋は通話に応じた。

 待たせてしまっていることをまず謝罪し、緊急のオペに入っていたことを伝える。

 連絡もなしに約束の時間に、しかも店を予約しているのにひとりで待つことになり、不安にさせていることは間違いない。

 でも、電話の向こうの声は穏やかで、『大丈夫ですよ』と言ってくれた。


『待ってますね。急がなくていいですから、気をつけてください』


 とりあえず連絡がついたことに安堵しながらも、飛んでいくような思いで千尋のもとに向かった。

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