溺愛前提、俺様ドクターは純真秘書を捕らえ娶る
3、政略結婚は嵐の訪れのように



「そうでしたか。それは仕方ありませんので、また改めてご予定を伺わせていただければと思います。いえ、とんでもございません。院長にもその旨伝えさせていただきます──」


 時刻は十七時を回る頃。

 ジャケットのポケットに入れておいたスマートフォンが震えだし、受けた電話は今日十八時からの会食相手の秘書からだった。

 ご家族の急病でどうしても帰宅せざるを得ない状況らしく、会食の日時を変更したいという連絡。

 その応対をしている最中、院長室の扉が開き、水瀬院長が姿を現した。


「どうぞお大事になさってください。はい、失礼いたします」


 通話を終え、院長室に戻ってきた水瀬院長へ「お疲れ様でした」と声をかける。

 十三時から人工血管置換手術のオペが入っていた水瀬院長は、ネイビーカラーのスクラブだ。

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