※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「セオドア――――?」


 目の前には、正装に身を包み、大きなバラの花束を手にしたセオドアが立っている。いつもよりもキッチリと撫でつけられた髪の毛。どこか緊張した面持ち。訳が分からなくて、わたしは彼を見上げることしかできない。


「君を迎えに来たんだ」


 セオドアの言葉に目を見開く。
 それは彼が決して口にしなかった未来を意味する言葉だった。花束を手渡し、跪く彼に涙が溢れ出す。


「サロメ――――どうか、俺と結婚してほしい」


 真剣な眼差し。彼が本気なんだってことがよく分かる。


「だけどセオドア! わたしじゃあなたに相応しくないわ。これから伯爵になろうというあなたが、未亡人であるわたしを選ぶだなんて……」

「両親は既に納得している。君の父親にもきちんと話を通した。あとはサロメが頷いてくれるだけで良い」


 喉が焼け付く様に熱い。
 本当は今すぐに頷いてしまいたい。

 だけど、本当にそれで良いのだろうか? 
 屋敷の皆はどう思う?
 厄介払いができると思ってくれるなら良いけど、恩知らずだと腹を立てるのでは?


「サロメ様。セオドア様は、あなたが嫁いで来る何年も前から、こちらの屋敷を何度も訪れていらっしゃるのですよ?」

「……え?」


 どういうこと? 首を傾げるわたしに、ロバートは優しく微笑んだ。


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