※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「どう、して?」


 あの時エヴァレットは、宝石として完成したものをアンナに贈ると言っていた。彼がその約束を忘れるはずがない。


「君が愛おしいと思ったから」


 そう言ってエヴァレットは、アンナの指先に優しく口づける。
 あの日の痺れるような感覚が蘇り、アンナの瞳に涙が溢れる。エヴァレットは穏やかに微笑みながら、そっとアンナの涙を拭った。


「プライドが高くて扱いづらいところも、僕にだけ見せてくれる可愛い笑顔も、全部この原石みたいで、僕は愛しい。それに、こう見えて僕はプライドが物凄く高いからね。君という原石を磨くのは僕でありたい。そう、思ったんだ」


 気丈に振る舞うアンナをエヴァレットが優しく抱き締める。

 エヴァレットも最初はきっと、先程の男が言う通り、自分ならばアンナの鼻を明かせると――――攻略してやろうと、そう思っていたのだろう。

 けれど、目の前の彼の瞳は、言葉は真っ直ぐで、疑いようがない。それに、アンナ自身がエヴァレットのことを信じたいと強く願っていた。


(わたくしはこれからきっと、いくらでも変わることが出来る)


 どんなに悔いても、過去を変えることはできない。けれど、未来ならばいくらでも変えていける。
 アンナが希望を見出し、進んでいくことを快く思わないものもいるだろう。けれど、アンナは大人しく引き摺り落とされてやる気はない。自分らしく、けれど形を変えて、より良い自分を目指していこうと胸に誓う。


「好きだよ、アンナ」


 エヴァレットの口付けを受け入れながら、アンナは満面の笑みを浮かべるのだった。
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