※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 そんなことが続いたある日のこと。その日は、いつもの時間になっても、ジュールが図書館に現れなかった。


(そうだよね)


 別に、元々約束をしていた訳ではない。
 ノエミはノエミの、ジュールはジュールの意思で、それぞれこの場所に赴き、偶々一緒に時を過ごしていただけなのだ。

 だから、こんな風に唐突に会えなくなる日が来ると最初から分かっていた。ジュールが来るのを待つなんて――――寂しいと思うなんて馬鹿げている。


(それなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう)


 司書が閉館を告げる声が聞こえる。いつもの席に腰掛けながら、ノエミは一人肩を震わせる。


「ノエミ!」


 その時、静かな図書館に声が響く。顔を上げれば、ジュールが息を切らしてノエミのことを見つめていた。


「ジュール……」

「良かった……! 間に合った! 遅くなってごめん」


 心底安心した表情でジュールは笑う。


< 337 / 528 >

この作品をシェア

pagetop